楽天広告のROAS改善|ROASだけで商品を切ると損をする理由

楽天市場

ROASを見て広告を切ると損をする|LTVで見ると「かけるべき商品」が逆転する話

結論からお伝えします。楽天広告(RPP等)のROAS改善の正攻法は、①成績の悪い商品・キーワードの除外 ②上限CPCの調整 ③広告に載せる商品の選定の3つです。この記事でも順に解説します。

ただし、先に警告を1つ。ROASだけを見て商品を切ると、店で一番の稼ぎ頭を自分の手で殺すことがあります。私は実際に、ROAS最下位で「止める寸前」だった商品が、LTVで見ると全商品1位の入口だった——という場面に立ち会いました。ROAS改善は正しい。しかしROASには構造的な盲点があり、その盲点を埋めるのがLTV(顧客生涯価値)です。

楽天市場で店舗運営を10年支援してきた私が、正攻法→盲点→再評価の順で解説します。

まず正攻法:ROAS改善の基本3手

検索意図にきちんと応えるため、基本から。ROAS(Return On Advertising Spend)=広告経由売上 ÷ 広告費です。改善の定石は3つ。

① 除外設定:成果の出ていない商品・キーワードを配信から外し、無駄クリックを止める

② 上限CPCの調整:商品ごとの採算に合わせてクリック単価の上限を設定する(現在のRPPは、設定した上限CPCの範囲内で配信が自動調整される仕組みです。つまり店舗側に残された仕事は「上限をいくらに置くか」「何を除外するか」の判断です)

③ 商品選定:広告で押す商品を、転換率と利益率で選び直す

どれも有効です。ただし3つとも、「何を基準に判断するか」という肝心の部分が空欄になっています。除外の基準は?上限CPCの根拠は?押すべき商品の定義は?——多くの店舗はここに「ROASが良いか悪いか」を代入します。そして、そこに罠があります。

ROASの構造的な盲点:それは「1回目の成績表」でしかない

ROASの分子は「その広告経由の売上」——つまり初回注文の売上です。その注文のお客様が翌月また買っても、1年で5回買っても、ROASには1円も反映されません。

ここで、冒頭の実例を数字で見てください。

  • 商品A:ROAS【198%】(広告費1万円→売上1.98万円)。粗利を考えればほぼ赤字。レポート最下位の”お荷物商品”
  • 主力商品B:ROAS【500〜700%】。誰が見ても優等生

ROAS基準なら、Aを切ってBに寄せるのが「正しい改善」です。ところが顧客単位で追跡すると——

  • 商品Aから入ったお客様:初回【2,980】円 → 12ヶ月LTV【14,200】円(全商品1位)
  • 商品Bから入ったお客様:初回【4,980】円 → 12ヶ月LTV【6,100】円

Aはお試し的な入口で、気に入ったお客様が定番サイズへ進む「未来のリピーターの製造装置」でした。ROAS198%の正体は、LTV14,200円の顧客を2,980円の初回売上で獲得している、店で一番効率のいい投資だったのです。

そして、この判断ミスの最も怖い性質はこれです——Aを切れば店全体のROASは上がり、レポート上は永遠に「正しい改善」に見え続けます。売上が沈むのは半年後、そのとき原因はもう誰にも辿れません。

ROAS×LTVの4象限:広告予算の再配分マップ

盲点の埋め方はシンプルで、縦軸にROAS、横軸に「入口LTV」(その商品を初回に買ったお客様のLTV)を置いて、商品を4つに分けるだけです。

入口LTVが高い入口LTVが低い
ROASが高い主力:現状維持+在庫と相談しつつ拡大収穫商品:1回きりで刈り取れている。維持はするが、拡大投資はしない
ROASが低い隠れた入口:最優先で拡大。上限CPCを引き上げる価値がある削減対象:ためらわず除外・縮小

ROASだけの世界では「上の行=正義、下の行=悪」でした。4象限にすると、本当に切るべきは右下だけで、左下(隠れた入口)はむしろ増額対象だと分かります。そして多くの店で、広告予算は右上(収穫商品)に過剰に載っており、左下が飢えています。予算総額を1円も増やさず、右上から左下へ移すだけで、1年後の顧客資産が変わる——これがLTVを使ったROAS改善の本体です。

商品別「許容CPC」の逆算式——上限CPCに、初めて根拠ができる

4象限で方向が決まったら、金額の話です。RPPの上限CPC、今は何を根拠に決めているでしょうか。相場感、前月踏襲、なんとなく——が実態だと思います。入口LTVが分かると、ここに初めて計算式が入ります。

商品別の許容CPC = 入口LTV粗利 ÷ 目標回収倍率 × その商品のCVR

例:入口LTV粗利【9,000】円・回収倍率3倍・CVR【4】%なら、許容CPC=9,000÷3×0.04=120円

この式が意味するのは、上限CPCは全商品一律ではなく、商品ごとに「払っていい上限」がまるで違うということです。入口LTVの高い商品(4象限の左側)は、競合より高いCPCを払っても回収できる——つまりオークションで競合に競り勝てる。逆に右下の商品は、相場より安くしか払えないなら、除外が正解です。

CVRの低い商品にはもう1つ注意があります。ROASが良く見えても、CV数が少なすぎる商品は数字が偶然で上下しているだけのことがあり、少ないCVで「良いROAS」に見えている商品への増額は危険です。判断材料はROASの見た目ではなく、LTVと母数です。

「消化試合」になった入札調整と、残された人間の仕事

なお、RPPは自動最適化の仕組みが入り、日々の細かな入札調整は楽天側のシステムが担うようになっています。「運用テクニックで差をつける」余地は年々狭くなっている、というのが実感です。

では店舗側に何が残ったのか。「上限をいくらに置くか」「何を除外するか」——つまり判断の根拠です。そしてここまで読んだ方はお気づきの通り、その根拠は広告レポートの中にはありません。注文データ(入口LTV)の中にあります。広告運用の巧拙の時代から、判断基準の有無の時代へ——ROAS改善の主戦場は、広告管理画面から顧客データに移っています。

入口LTVの出し方(手順の入口)

  1. 注文CSVから同一顧客を名寄せする(メールアドレス。Excel操作レベルの完全手順→記事⑥データ分析のやり方)
  2. 顧客ごとの初回購入商品を特定し、商品別にグループ化する
  3. グループごとに12ヶ月LTVを算出し、粗利率を掛ける(LTV計算の考え方→記事②LTV計算方法)
  4. ROASと並べて4象限に置く

正直に書くと、この集計をExcelで毎月続けるのは1店舗丸1日超の作業です(私は【3ヶ月】で挫折しました)。そして広告の判断は毎月発生します。判断基準は、毎月更新されて初めて入札の根拠になります。

まず、自店の広告判断に「基準」があるか30秒で確かめる

あなたの店の上限CPCは、何を根拠に決まっていますか。どの商品が「隠れた入口」か、即答できますか。無料診断で、「見えていない数字」の数と、業態・月商規模から推定される毎月の損失額を試算できます。登録不要です。

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よくある質問

Q. ROASの目安は何%あればいいのですか? 一律の正解はありません。損益分岐ROAS=1÷粗利率が最低ライン(粗利率40%なら250%)ですが、本文の通り、入口LTVの高い商品は損益分岐を下回るROASでも投資として成立します。「全商品共通の目標ROAS」を置くこと自体が、4象限の判断を潰す原因になります。

Q. RPP以外の広告(クーポンアドバンス等)にも同じ考え方は使えますか? 使えます。むしろ新規獲得系の広告ほど「1回目の成績」と「その後」の乖離が大きいため、LTVでの再評価が効きます。クーポン経由の新規客のLTV計測はコード別に追えます(→記事⑪)。

Q. 入口LTVを見るには、どのくらいのデータ期間が必要ですか? 最低12ヶ月を推奨します。期間が短いと、LTVが積み上がる前の「途中経過」で商品を裁くことになり、投資型の入口商品ほど不当に低く評価されます。ROASで切る失敗と同じ構造の失敗を、LTVで繰り返さないでください。

ROASの次は、「その後の売上」まで見てみませんか?

ROASだけでは、広告で獲得したお客様がその後いくら買っているかまでは分かりません。

「ROASが悪いから切る」の前に、その商品がリピーターを連れてくる入口になっていないかを確認してみてください。

楽天の受注データを取り込むだけで、商品ごとの入口LTVやF1→F2転換率、2回目までの日数などを自動で分析できます。面倒な初期設定はありません。データを取り込んだその日から、自店の数字で判断できます。

広告費を増やす前に、まず「本当に広告をかけるべき商品」を見つけてください。

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